一歩進んだ 新版 教職概論 教育の最新事情からの「教職概論」
ISBN:9784863871465、本体価格:1,600円
日本図書コード分類:C1037(教養/単行本/社会科学/教育)
164頁、寸法:14.8×21×10mm、重量262g
発刊:2021/04
【はじめに】
この本を手に取った皆さんは、「教職」に興味や関心をもった方々でしょう。職業選択のひとつの選択肢して「教職」、平たくいえば「学校の先生」をめざそうかと考えているのかもしれません。また、現職の教員の方でもう一度「教職」という職の内容を確認されるためにこの本を手に取られた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
大方の人は、いままでは、教育を受ける側、児童、生徒という立場から学校の先生の様子をみてきたのではないでしょうか。今度は立場が逆転することになります。「教師」という立場から、職業のひとつとして「学校の先生」の仕事の内容や生活の様子をみてみる、確認してみる、ということが本書の大きな目的のひとつです。また、いま現在、教職に就いている方も、もう一度、「教職」の意味、さらに、昨今の教育の最新事情を確認したいという方々にも参考となるものだと考えています。
いま、学校教育は大きな曲がり角に直面しています。社会の劇的な変化にともない学校教育もその姿を大きく変えていく瀬戸際に来ているようです。その様な時に、「教職」をめざす皆さんに何が必要なのか、どんなことをあらかじめ知っていてほしいのか、さらに、それらに立ち向かい、「教職」を職業として充
実した、やりがい、生きがいのあるものとしていけるよう、その職に就いて人生を送るための基礎的な情報を提供することを編集の基本としました。
編集にあたり執筆者間での話合い、情報交換を密にして、可能な限りup-todateな内容とすることを心がけましたし、文章そのものが簡潔で読みやすいものになるよう心がけたしだいです。本文中の資料及び内容は、発表された重要な答申や資料をもとに、内容によってはそのものを掲載しています。
ここに新版を刊行する運びとなりましたが、編集方針は旧版と同じです。本書が読者の皆さんの進路選択の一助となってくれることを願ってやみません。どうか本書を有効に活用して「教職」への理解を深めていただければ幸いです。
桜舞う仙台桜丘のキャンパスにて 齋藤 公子
【おわりに】
ここまで本書を読み進めていただいた皆さんに感謝いたします。
さて、ヨーロッパらみれば東の端にあるこの小さな島国が世界のなかで確固とした地位を築き保ち続けている、という事実は驚愕に値する事実でしょう。さらに、この小さな島国には、石油、石炭など地下に埋蔵された鉱物資源かがほとんどありません。あるのはこの島国に暮らす一億数千万人の人びとです。
NHK21世紀スペシャル大河ドラマ、司馬遼太郎原作の「坂の上の雲」の冒頭、俳優の渡辺謙さんのナレーションの一部に、
「明治維新によって日本人は初めて近代的な「国家」というものをもった。誰もが「国民」になった。不慣れながら「国民」となった日本人たちは、日本史上の最初の体験者としてその新鮮さに昂揚した。」
「この痛々しいばかりの昂揚がわからなければ、この段階の歴史はわからない。社会のどういう階層のどういう家の子でも、ある一定の資格をとるために、必要な記憶力と根気さえあれば、博士にも、官吏にも、軍人にも、教師にもなりえた。この時代(明治時代)の明るさは、こういう楽天主義から来ている。」
と述べているところがあります。特に、明治5年の学制発布以来、日本の学校教育は多くの人を育ててきました。そして、当時、いくつかの戦役を経ましたが、その人びとは欧米列強に伍する原動力となりました。日本の歴史を振り返れば、教育の力は絶大であったと言っても過言ではありません。
ですから、いつの時代にあって、その主な担い手しての「教師」の有様が問われています。子どもたちのことを思い、社会を思い、ひいては日本ばかりか世界を広い視野で思い考えることのできる優秀な若人が「教職」に就くことが21世紀以降の日本の明暗を分けることになるのかもしれません。新版を刊行するにあたり、本書が皆さんの「教職」への理解に役立ち、進路選択の一助となれば幸いです。
武蔵野の桜を見上げながら 齋藤 嘉則
【目次】
第1章 「職場」の風景
第2章 教育の目的と意義~ルソー『エミール』を手がかりに~
第3章 「教職」の現状と国際比較(1)
第4章 「教職」の現状と国際比較(2)
第5章 教職観の変遷と今日の教員に求められている役割(1)
第6章 教職観の変遷と今日の教員に求められている役割(2)
第7章 教員に求められる資質・能力(1)
第8章 教員に求められる資質・能力(2)
第9章 教員の職務の全体像(1)
第10章 教員の職務の全体像(2)
第11章 教員研修の必要性とその実際
第12章 教育法規の基礎・基本
第13章 教員に課せられる服務上、身分上の義務及び身分保障
第14章 チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について
第15章 新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策
第16章 教育の最新事情―学習指導要領の構造
第17章 教育の最新事情―道徳教育と特別活動
第18章 教育の最新事情―小学校英語の早期化・教科化に向けて!「音声指導の要諦」
巻末資料 日本国憲法(抄)、教育基本法
*第16章以降は、教育の最新事情の追加説明として、学習指導要領の構造、道徳科の教科化について解説している。さらに、小学校英語が早期化、教科化され、英語の音声指導についての不安の声が多いことから、鈴本渉氏による「音声指導の要諦」を第18章として掲載した。参考にされたい。
【著者紹介】
〔編著者〕
齋藤 公子
鈴木 渉
齋藤 嘉則