塩江物語 第一話 大蛇(二刷) 別子八郎 伝
ISBN:9784863870673、本体価格:800円
日本図書コード分類:C0023(一般/単行本/歴史地理/伝記)
89頁、寸法:128×182×5mm、重量104g
発刊:2015/10

塩江物語 第一話 大蛇(二刷) 別子八郎 伝

【内容紹介】
 讃岐井原郷(現・香川県塩江町)に伝わる昔話『別子八郎の大蛇退治』をモチーフにした、戦国歴史小説。
 蛇(じゃ)とは、井原郷周辺の人々が使っていた土佐者(長宗我部元親の兵)の俗称。
 天正8年に内場城の家臣となった武将・伊豆八郎(のちに別子八郎)が、天正10年から井原郷に侵攻し暴虐の限りを尽くす土佐者を、阿波脇町城主・武田信顕の助けを借りながら撃滅するまでを描いた快作。
 四国の武将といえば伊予の藤原純友、阿波の三好長慶、そして土佐の長宗我部元親で、実は讃岐からは名だたる武将を輩出していない。
 戦国の乱世とは無縁だった、太平無垢な土地で繰り広げられた武将の物語は珍しく、今も脈々と語り継がれている。

【昔話『別子八郎の大蛇退治』】
 弓の名人、別子八郎が、井原郷安原山に住んでいた大蛇を退治した昔話を小説にしたもの。
 八郎は何度も弓を射たが、矢が立たない。矢が尽きたと思った大蛇が、頭にかぶっていた鐘を脱ぎ、八郎を一飲みにしようとした時、最後の矢で射られ、血を流し逃げ去った。
 八郎は、退治できたのは観音様のおかげと、大蛇が脱ぎ捨てた鐘を讃岐国分寺に寄進した。その鐘は現存している。

【結びに】
大阪自遊人協会 塾長 頭山 龍彦
 温泉と大蛇の町、香川県高松市塩江町と大阪府枚方市は姉妹都市である。私は枚方市に居住し、島上氏(以下氏という)は塩江町出身である。そんなこともあって、いつしか氏と話をする仲になった。いつどこで知り合ったのか、今もって分からない。 塩江町の物産展が枚方京阪駅構内で定期的に開かれるので、そのとき知ったのかも知れない。氏に訊いてもよく知らないという。良くいえば、似たもの同士なのかもしれない。
 自遊人協会で宴会をし、私が肉、野菜、玉子を差し入れする。といっても、母屋からの頂き物である。私は次男坊で、母屋の野菜玉子を失敬してくる頂き物である。その頂き物を誰も料理することが出来ない。
 自遊人協会の会員は高学歴である。医者、大学の教授、東証の株式に名を連ねている社長もいる。しかし誰も料理ができない、本当につまらない族(やから) ばかりだ。そんななかで、随一料理のできるのが氏だった。 氏は手際がよく、野菜、魚でもすぐ料理する。カレー、ジャガ肉、鶏スキ、刺身等何でもこなす。料理はすこぶる美味いのである。 自遊人協会に集まってくる族の話は、古今東西の有名な古人を味噌粕に論(あげつら) ったり、近年の政治家等を槍玉にあげて飲むのである。私がいつも隅の方に座っている氏を偶(まれ) に中央に座らせ、喋らせる事がある。氏の話は大変に面白い博学である。そんな控えめな氏が、塩江町の町興しのための「大蛇」という小説を書いたので、読んで欲しいといってきた。
 自遊人協会の会員は、自遊人といって自ら遊び人を任じている族ばかりで、そういう私も人生の大半を遊んで暮らしている怠け者である。会員の族らは早く云っても遅くいっても、謂わば変人奇人の集まりで、そんな一癖、二癖のある者にも読んでもらった。この著書が五十年、百年後に堪えるものか、どうか。氏の書いた著書は合か否か。堪えるものでなければ、出版するのは止めておけと勧告する。侃々諤々と論を発し、会員の出した結論は合と言う事で了とした。
 私は氏に、君の文章はどこで習ったのかと訊いた所、独学でとくに小説の勉強はしてなく、自遊人の会員と付き合っているうちに、自然と書けるようになったと応えた。
 我が家の猫がどういうことか氏に非常に懐いている。氏が来訪すると、いつも膝の上に載ってすやすや眠るのである。我が家の猫は気難しい猫で、飼い主に似て変猫である。その変猫を自然と懐かせる氏を、私は奇人だと思って、妙に尊敬している。我が家の変猫を懐かせるすべを知っている氏なら、小説も書けるのではないかと思った。
 私が考察するに、氏は変人奇人の自遊人と付き合ってるうちに、氏のなかに眠っていた才能が、変猫を自然に懐かせる特技のように目覚めたのであろう。私は真の意味で氏が自遊人になったことを嬉しく思った。氏は大器晩成と思う。
 氏は今年六十六歳だが、私は還暦を二十歳と思えと会員にはいつも云っている。それから云うと、氏は今年、まだ二十六のひょっこだ。故郷の本を一冊出して満足するくらいなら止めろといった。故郷ゆかりの著書は最低二十冊ぐらいは出し、故郷に尽くせと。
 本文に入ろう。読んでみると大変考えさせられる著書だった。まるで現代の日本の世相を表しているようではないか。この著書は限定本ということであるが、いつまでも残って行くのでないだろうかと思う。不思議な本だ。
 氏はこれから塩江物語を二十冊以上出し、柳田国男の遠野物語のようになればいい、東の遠野物語、西の塩江物語と云うようになって欲しい。故郷に尽くせ。君ならきっとできる。次回の著書にも期待する。
    塩江の うれし楽しい いで湯かな

【目次】
第一章
第二章
第三章
あとがき
結びに 頭山 龍彦

【著者紹介】
〔著者〕
島上 亘司

【出版社から】
好評により増刷しました。